三砂堂漢方伝統医学研究室    
漢方薬の勉強会−肝臓病
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●現代人に増加する肝臓病
 食の欧米化、飽食の時代の中で代謝・排泄も乱れがちで、益々増える肝臓の病。
 そして、切っても切れない関係にあるのが肝臓と腎臓です。
 
○肝臓病患者の最近の傾向は
 これらの臓器に起こる病気について、厚生労働省「患者調査」のデータを調べてみますと、肝の疾患による患書数は、この400年間でなんと約5〜6倍にも増加しています。

 また、年齢別のグラフから見ると、30歳代からの数が急激に増え、特に男性に多いことが分かります。

 時代が変わるにつれ、忙しくなる社会、又肉食ヘの食の変化等に加え、ス卜レスや過労が重なり、お酒で身体に負担をかける機会が増えたことも関係しているようです。
 肝臓は"沈黙の臓器''とも言われるように症状が出にくい臓器でもあるのです。また、肝臓は腎臓と共に助け合って、身体の解毒を行う大切な器官でもあります。
 手遅れになる前に肝臓の対策を考えましよう。

●どんな痛気? 肝臓病
 肝臓は身体の中でも脳と並ふ程の重い臓器で、体重の1/45〜1/50を占めています。
 この大きな肝臓は、我々人間体内の化学工場とも言われるように、実に様々な働きをしています。
 そこで、肝臓の働きと肝臓に起こる病気について見てい<ことにしましょう。

○肝臓の働き
1.物質代謝

 肝臓では、吸収された栄養物がどんどん身体に必要な形に作り変えられて血中に送られます。
 またエネルギー源として貯えられる分は、必要に応じて分解され血中に送られます。
 肝臓は物質を変化させる、いわば化学工場の働きをしているのです。

ブドウ糖 アミノ酸 脂質
グリコーゲン 血漿蛋白
抗体蛋白
コレステロール
リン脂質
肝臓に貯蔵

2.解毒作用

 体外から入ってきた有害物質や、体内で生じた有害物質を毒性の少ない形に変えて解毒します。
 この時、尿中に溶けやすいように水溶性物質に変えられ、解毒物は腎臓から排泄されます。

3.胆汁分泌
 脂肪の消化などを促す働きのある胆汁を製造し、また分泌します。

4.その他
 ビタミンの貯蔵・活性化、血液循環の調節、血液凝固因子の合成などの働きもあります。

○肝臓に起こる病気

 肝臓の病気は、一般的にはアルコールが原因だと思われがちですが、さまざまな要因によって肝臓に苦情が生じてきます。
 中でも、日本において主な原因となっているのは、肝炎ウイルスです。肝炎ウイルスはA・B・C・D・E・G型などがありますが、日本で多く見られるのはA〜C型の3種類です。

1.ウイルス性肝炎

種類 感染経路 潜伏期間 症状 慢性肝炎ヘの移行
A型 経ロ
(生水や生の良ぺ物)
2〜6週間 発熱、吐き気、倦怠感(急性肝炎)
時に劇症肝炎を起こす
なし
B型 血液又は母子感染 1〜6カ月 成人で感染した場合は、急性肝炎から時に劇症肝炎をを起こす 母子感染の場合に移行(免疫が備わっていない時に感染するため)
成人では移行しにくい
C型 血液
(主に輸血、注射)
1〜16週間 急性肝炎から慢性肝炎ヘ移行し、放置すると肝硬変、肝臓癌にまで進む恐れがある 急性肝炎から約80%が慢性化する

 その他にも肝臓の病気には以下のようなものがあります。

2.急性肝炎
原因:
 肝炎ウイルスの感染によるもので、どの型でも起ってくる。
 薬物の使用用も原因となることがある。

症状:
 食欲不振や吐き気、全身倦怠感、発熱、腹痛、下痢などがあり、黄疸症状が出てくる。
 黄疸がはっきり出てくる頃には、自覚症状が軽くなり、熱や倦怠感が取れ食欲も回復してくる。
 自覚症状がなくなっても、肝臓はまだ回復しきっていないことが多く、急性期が長引くと慢性とな    るので、この時期の養生が特に大切になる。

3.慢性肝炎
原因:
 肝炎ウイルスでB.C.E型の一部が慢性化する。
症状:
 特別な症状はなく、全身倦怠感、食欲不振、気分がすぐれないなどの不定の症状を訴える。
 無症状のことが多く、はっきリした症状が現れない状態が続く。
 肝機能検査では異常を示す。
 治療しがたく、長期に渡るため、肝機能障害を残すことが多い。
 又、約1割程度が肝硬変ヘと移行する。

4.肝硬変
原因:

 肝炎ウイルス、又長期に渡るアルコールの過剰摂取も原因となる。慢性肝炎から移行してくる。
症状:
 肝炎に見られる症状に加えて、雲情血管腫などの血液循環障害や腹水がある。

5.脂肪肝
原因:

 食べ過ぎや運動不足、肥満により起こる。
症状:
 ひどくなると吐き気、嘔吐、黄疸などが見られる。

6.胆石症
原因:

 脂っこい食事や暴飲暴食に加えて、過労なども原因となる。
症状:
 胆管などの細い管にひっかかると、上腹部の激しい疝痛発作を生じる。
 その他に、吐き気や発熱、便秘などを生じることもある。
 無症状胆石といい、胆石を持っていながら全く症状の出ない場合も多い。

○肝機能検査
 肝臓は人体の化学工場と言われるように、複雑な機能をもつ器官であるため、障害を受けると血液や尿に諸種の変化を起こすようになります。その為、肝機能検査の項目も多く、多岐に渡って調査することになるのです。
 実際、病院等においては、検査の目的に従い数種の検査を組み合わせて実施します。
 ここでは、肝機能検査の中でも特に繁用されている項目を取り上げました。(値や単位については検査施設によって異なります。)


検査項目 基準値 肝機能障害時 解説
GOT 40単位以下 肝臓においてアミノ酸を作りかえる働きをしている酵素で、肝細胞中に|多く含まれている。肝細胞が障害を受けることで、、血液中に漏れ出て増加する。心筋や骨格筋にも含まれるため、これらの部位が障害を受けることによっても数値が高くなる。
500単位以上の場合は、急性肝炎が疑われる。
GPT 35単位以下 ほとんどが肝臓にあるため、数位の異常が見られる場合は、肝臓に異常があると考えて良い。
急性肝炎GOT、GPT共に500単位以上かつGOT<GPT
慢性肝炎50〜300単位かつGOT<GPT
肝硬変・肝ガン50〜100単位GOT<GPT
γ−GTP ♂40単位以下
♀30単位以下
肝臓だけでなく黄疸が出るような胆道系の病気においても、検査値が上昇。
肝臓での解毒作用に関与している酵素であるため、角の飲酒で数値が上昇する。
(常習飲酒者は80単位以下)
ビリルビン 総ビリルビン
02〜10mg/dl

肉眼的に黄疸と認められる状態になるのは3mg/dl以上
黄疸(体内組織や血中ビリルビンが増加して、皮膚や粘膜が黄色く染まった状態)
の有無を調べる。
A/G 1.0〜2.0
(塩析方法)
アルブミンは肝臓で作られるため、障害のあるときに減少する。グロプリンは減少することははまれで、肝硬変などの際には増加する傾向を示す。
TTT 0〜5単位 γ−グロプリンの異常を調べる。肝硬変などで正常細胞が減少したときにγ−グロブリンが増加する。
ZTT 4〜12単位 肝機能が低下し、アルブミンの生成量が低下して、グロプリンが増えるため数値が高くなる。


○現代医学では肝臓病対策をこう考えます。


 現代医学においての肝臓病対策としては、下記のような様々な方法がとられています。
 しかし、ウイルス性肝炎のインターフェロン療法以外には、病変進行の阻止できるものはありません。
 また、障害部位の治療をはかるような薬剤はなく、補助的に働くものが中心となっています。
 しかし、インターフェロン療法も、副作用、C型肝炎ウイルスでも、型によっては効きにくいもの、ウイルス量が多いと効きにくいかない場合等があります。

○肝臓病に対する現代医学の治療法は
 一般的に、このような方法がとられています。

肝庇護療法 一般的にとられる療法で、肝庇護薬としてメチオ二ン、ブドウ糖、チオクト酸、グルクロン酸、肝抽出エキスやビタミンなどが用いられます。
点滴静注 急性症状や食欲不振のある患者に用いられます。
点滴静注液として、ブドウ糖溶液、さらにビタミンB1、B2、B6、Cなどが加えられています。
ステロイド療法 副腎皮質ホルモン剤(例:ブレド二ゾ口ン)や免疫抑制剤(例:6MP、アザチオプリン)などが、使用される場合も多いですが、これらの有する副作用(消化器障害、糧神障害など)には、注意が必要であるとされています。
インターフェロン療法 ウイルス性肝炎に対しては、抗ウイルス薬としてインターフエロンを用います。インターフェロンは、ウイルスの排除や肝細胞の破壊を抑制するように働きます。
しかし、インターフェロン療法では、眼底出血、眼底出血、肺炎、うつ病、甲状腺機能障害のような副作用が出ることもあります。

 胆石症には、利胆剤を用い、痛む時には鎮痛・鎮痙剤を用います。

○漢方では、肝臓病対策をこう考えます
 昔から肝臓病や腎臓病に対しては、その病状や体質に応じて、諸種の漢方薬の処方が使い分けられてきました。
肝臓病には
小柴胡湯、大柴胡湯、茵Y蒿湯、
柴胡桂枝乾姜湯
など
腎臓病には
五苓散、越婢加朮湯、猪苓湯、
当帰芍薬散
など
その後時代が進むにつれ、古人の経験の積み重ねにより、
以下のような漢方薬の処方が生み出されてきました。
   肝臓に効く漢方薬    +    腎臓に効く漢方薬
    小柴胡湯         +      五苓散     →       
柴苓湯
    茵Y蒿湯         +      五苓散     →      
茵陳五苓散

☆では、このように肝臓と腎臓の両方に働く漢方薬の処方が考え出されたのはなぜでしよう?

 人間の臓器は単独で働くのではなく、いろいろな臓器が互いに助け合っています。
 その中でも、肝臓と腎臓の関係を見てみると、

肝臓が故障→解毒されなかった毒素が腎臓を刺激して、その機能を弱めてしまいます。
腎臓が故障→腎臓で排泄できなかった毒素が肝臓に回つてくると、肝臓がいくら解毒しても追いつかず、肝臓が過労してしまいます。

 即ち、肝臓・腎臓いずれか一方が悪<なると、もう片方の臓器にも悪影響を与えてしまうのです。
 従って、
肝臓・腎臓の病気はそれぞれを単独に治すだけでは不十分であり、両方の働きを良くする方法が、より効果的なのです。

 ところが、古くからの漢方薬の処方では、現代人の体質に適合しない場合もあることが分かってきました。医療機関で、小柴胡湯の副作用による間質性肺炎などの副作用が起こっていることからしてみても、現代人にとってこれらの漢方薬は、身体を冷やしすぎてしまうのです。

○現代人の肝臓病に必要な近代漢方薬は
 そこで、従来の漢方処方における利点を取り入れて、現代の薬理の考え方を加味した肝臓と腎臓の働きを共に助けていく現代人向けの漢方薬の処方が必要な時代になってきました。
 下に示す漢方薬の処方は、身体を過剰に冷やすことがなく、また胃腸の弱い現代人にも、安心して使えるように考えられた漢方薬です。
 また、糸球体の血流が悪い場合、貧血がある場合には下記の漢方薬に加えて四物湯を、慢性化している場合には、人参剤などの併用が効果的です。

肝臓機能の調節 柴胡 肝臓の機能を調整する
山梔子 黄疸で発黄するのを防ぐ
決明子 便秘を改善し、ホルモンの分泌を盛んにする
茵Y蒿 胆汁の分泌を盛んにさせる
腎臓機能の調節 茯苓 細胞内の不良水分を除く
白朮 消化関係の不良水分を排除する
桂皮 血流を良くし、肝臓や腎臓に充分栄養が行き届くようにする
沢瀉 腎の力を付け、不良水分を排泄する
猪苓 体内に滞留する水分を排出させる

(注意)
薬局製造医薬品として厚生労働省で認められている漢方処方の配合比や、構成生薬を変更することは、無許可医薬品製造に当たり、法律で厳しく罰せられます。上記の内容の漢方処方は、一般用医薬品として厚生労働省の許可を受け製造されている漢方処方です。