三砂堂漢方伝統医学研究室    
日本漢方(古方派)
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●日本漢方(古方派)とは
 今日、日本で普及している東洋医学は、「古方派」と呼ばれる伝統的な日本漢方の流れをくむものが主流になっています。
 遣唐使の時代から中国より伝来してきた漢方医学も、江戸時代になるとその理論が複雑化して観念的になってきたため、当時の日本人には受け入れにくくなりました。観念論を嫌い中国医学の理論を排除し、自覚症状と身体の表面に現れた症状(他覚症状)といった、はっきりと判断の付く症状のみを重視して、治療方法を決定しようとしました。また、自分たちのこれまでの漢方の治療経験を、より重要視するようになりました。
 これらの漢方医学の流派は、古方派は古方派と呼ばれ、鎖国政策で中国医学が入りにくいこともあり、日本独自の漢方医学として江戸時代に発達しました。

●日本漢方(古方派)の特徴は
 古方派の漢方は、中国の漢の時代に書かれた「傷寒論(ショウカンロン)」「金匱要略(キンキヨウリャク)」をという医学書が、ベースになっています。この医学書は、方証相対といって、証(病状や体質)と方(漢方処方)が一対になっていることが、最大の特徴です。病気の症状と、それに対応する漢方処方が明確になっているのです。反対に、東洋医学の基礎理論や病気の理論を考える病院病機学など、理論的な事はあまり、表には出てきません。
 つまり、漢方的な病気の理論のところはブラックボックスになっていて、自覚症状と漢方的診察結果をインプットすると、自動的にそれに対応する漢方処方が決定する、すなわち、治療方法がアウトプットされるのです。すごくシンプルで実利的な手法です。

●日本漢方(古方派)の診断と治療のやり方
 先ず、患者の自覚症状の確認と、脈診、舌診、腹診などの漢方的診察(他覚症状の確認)を行います。
 次に、気血水、虚実、三陰三陽病などの基本的な日本漢方(東洋医学的)理論に基づいて、大まかな証の判定めを行います。ここで、使える漢方処方を大ざっぱにふるいにかけ選び出します。
 そして、再度自覚症状と漢方的診察結果から、最適な漢方処方を選び出すのです。このときに参考になるのが、傷寒論という漢方医学書に記載されている症状となります。例えば、「脈が浮(脈を強く按じなくても、軽く触れるだけではっきりと脈を感じることが出来る状態)で、発熱頭痛があり、発汗が少なく、肩や筋肉がこわばっているときには、葛根湯が使用される。」と言うよな具合です。
 このように、日本漢方における証というのは、効果があると予想される漢方処方名で表されます。上記の例えでは、葛根湯証と言うことになります。
 漢方的な診察が出来て、証が決まれば即漢方の処方が決まるのです。非常に合理的な考え方です。これが日本漢方(古方派)のやり方です。

●日本漢方の理論について
○漢方の虚実

 日本漢方でいう虚証とは、生きていくエネルギーが比較的不足している状態をいいます。実証とは、逆に体力が充実している状態、比較的生きていくエネルギーが充実している状態を言います。
 この実証の概念は、同じ東洋医学でも中医学と異なる点です。ちなみに、中医学では、邪と正気の関係でとらえます。中医学で実証とは、邪気(病気の原因)が盛んな状態、過剰な状態を言い、虚証とは正気の虚を言います。
 しかし、両者は関連があり、正気が充実していれば、邪気が侵入してすることはありませんし、正気が弱くなると、邪気が強くなって発病します。結果として同じような状態を表すことも多くなります。


○漢方の陰陽
 陰陽に関しても、中医学と漢方医学では異なります。日本漢方では、狭義の意味での陰陽の捉え方をしていて、漢方医学で陽病とは、熱性、活動性などを表します。新陳代謝機能が亢進していて、闘病エネルギーが十分に発動できる状態を言います。従って闘病エネルギーが沢山湧かせて各臓器が過剰に働くので、熱が発生することが多くなります。
 これに対して、陰病は、寒性、非活動性など、新陳代謝機能が低下している状態を言います。闘病エネルギーが少ししか使えないので、各臓器はあまり働けず、熱が少ししか出せなかったり、吸熱反応が生じて、冷えを現すようになります。

○漢方の三陰三陽
 上記のように、漢方医学では、陰病は必要熱を欲しがっている寒の状態、陽病は不必要熱の沢山出ている熱の状態を表していました。
 これら陰病陽病も、熱の出方によってさらに細かく分類できます。ちょうど、一日のサイクルに似ていて、朝の太陽が昇りだして徐々に熱が出始める状態を、「太陽病」と呼びます。次に、だんだん日が昇り、熱が最も強くなる真昼の様子に似ているのが、熱と症状が最も激しい状態の「陽明病」です。そして、この病状を放置しておきますと、だんだん病気が進んできて陽気が少なくなり、夕刻に似た「少陽病」という状態になります。
 このように、陽病は病気の進行に応じて、太陽病・陽明病・少陽病の三つのタイプに分類されます。。これらの状態は、風邪を引いた時を想像していただければ、良く解ると思います。最初、悪寒発熱が起こります。でも熱はそれほど高くありません。この状態で治らなければ、節々に痛みが出てきて高熱が出てきます。これが陽明病です。しかし、風邪がさらにこじれてくると、熱は下がりますが夕方に症状が悪化したり、微熱が出てきたりします。この状態が少陽病に相当します。
 次に、陰病は太陰病から始まります。日暮れのいよいよ冷たくなる時刻に似た、陰の始めである太陰病です。太陰病が進むと陰がさらに増す状態の少陰病になります。その少陰病がさらに進み、陰のどん詰まりの極端な状態になることを厥陰病と呼びます。つまり丑三つ時に相当します。この時期になると、病勢がすでに過ぎて、命を全うし難くなります。