東西医学の病気(がん)の考え方の違い

東洋医学西洋医学は、心と身体を切り離して身体を機械のごとく要素に分解し病気の原因を診断し治療を行いますので、効き目はシャープですが副作用も起こります。一方、東洋医学は心身を一つの有機体と捕らえてバランス調整を行う医学ですので、患者さんの正気(治癒力)に依存し、効き目も穏やかで副作用も少ないのが特徴です。

西洋医学の病気(がん)の捉え方

西洋医学のベースは、科学技術ですから、正確さと再現性を求めます。
人間の心と身体を切り離して身体を機械のごとく、臓器、組織、細胞、遺伝子といった要素に還元して、その構造と機能を明らかにして、病気の原因を診断します。
その診断結果に基づいて、病気の原因となった臓器の壊れた部分を元に修復したり取り替えたり、原因が病原菌にある場合は殺してしまおうという治療です。

患者の心の状態、生活習慣や個人の持つ固有の体質いかんに関わらず、誰もが一定の効果を発揮できるように、治療方法が確立されています。その分、効き目がシャープですが、副作用も明確に出現します。

東洋医学の病気(がん)の捉え方

一方、漢方薬や鍼灸など、東洋医学には、整体観とい考え方が根底に流れています。
人体は、様々な機能や物質が有機的に関連しながら、一つになった有機体であるという考え方です。
人体の中を流れる構成成分には気・血・津液などがあり、人体を構成するものとして、六臓六腑があります。
さらに、東洋医学は肉体と心の関係も重視していて、心の動きは身体に影響を与え、逆に身体の状態が心の状態に影響を及ぼすのです。
心と身体の関係は「心身一如」と呼ばれ、東洋医学の考え方の基本の一つになっています。身体全体は、単なる部分の融合体ではなく、総和以上の有機体と捉えていて、部分が全体を構成するというより、全体が部分を規定すると考えています。
東洋医学のいう健康的な状態とは、身体流れる気血が充実していると共に、合わせて臓腑も正常に働いている状態をいい、これを正気が充実しているといいます。
従って、正気が弱ったり、身体のバランスが崩れた時に、病気になるのです。病気の本質的な原因は、身体の中=体質の悪化にあるのであって、外部からの要因は病気の単なる引き金にすぎないと捉えているのです。

現代医学のがん治療の選択と東洋医学の代替補完療法

現代医学の三大がん治療

まず、がんと診断されたら、現代医学の手術・化学療法・放射線という三大治療法とどう向き合うかが、第一の課題になってくると思います。
がん細胞が診断で確認できる塊になるまで、数十年かかると言われています。
従ってがんの塊が出来てからの進行は相当早く、治療によってがん細胞を除去できれば、がんからの生還は、圧倒的に有利なものとなるでしょう。

現代医学のがん治療の副作用

しかし、がんの三大治療は、大きな副作用を伴うのも事実です。現代医学のがん治療は、専門分野の学会で定められた、標準治療に従って治療が進められていますが、がんの種類、個人差によって、その効果と副作用は異なります。
特に、化学療法や放射線治療は、正常な細胞・組織にも大きなダメージを与えてしまいますので、医師から充分な治療に関する情報の提供を受け、効果と副作用の観点から、患者さん自身、そしてご家族の方が納得出来る治療を選択して下さい。

がんに対する東洋医学の代替補完療法

そして、皆さんが第二に検討されるのが代替療法ではないかと思いますが、東洋医学も、代替療法や補完療法として一般に認識されています。
東洋医学は西洋医学のように、がんなどの器質障害(構造的な変化を起こしてしまっている状態)を改善するのは得意ではありませんが、機能障害(臓器などの働きが怠けていたり、働きすぎている状態)を調整するのが得意な医学です。
従って、がん治療の場合、器質障害であるがん組織の除去は外科手術や放射線治療などでおこない、手術、薬物、放射線照射などで、低下した体力を東洋医学で回復させたいとお考えの患者さんが多いようです。
実際、手術後の感染症を克服するのも最後は患者さんご自身の免疫力ですし、がん組織除去後に残っている見えないサイズのがん細胞を処理するのも、免疫力ですから。

正気の充実が東洋医学におけるがん克服の決め手に

東洋医学には免疫力という言葉はありませんが、病気の直接の原因を邪気、邪気を排除して健康に戻そうとする力を正気と呼んでいます。
がん治療の予後の善し悪しも、この正気の充実いかんによって決まるといっても過言ではないと思いますので、代替補完療法としての東洋医学をどのように取り入れていくかは、正気を高める、つまり生体防御の力を高めて、病気と闘う力を養って行くためにとても重要な要素です。
正気を充実させることとは、科学的にみると、副交感神経の活動をうながし、リンパ球を増やすなど免疫機能が発動することに繋がっていきます。(最近では、新潟大学大学院教授安保徹先生の研究で、医学的にも交感神経の異常な緊張が免疫のバランスの失調と末梢血流の低下を引き起こし、それが慢性病の原因になっていることがわかって来ています)
また、正気は免疫と自律神経系以外にも、内分泌系との密接な関係がありますし、根本は細胞1個1個の生きの良さ、つまり代謝系にも関わっており、生体防御維持機能であるとか、恒常性維持機能と言うことができると思います。

ただし、正気の充実は、漢方薬まかせや鍼灸治療とった受け身の代替補完療法に頼るだけで、うまくいくものではありません。患者さん自身が主体となって、体質を改善して、正気を充実させて邪気から身を守るという意識を持ち、しっかりと養生法を実践することが重要になります。