新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大が続いている中で、感染を防ぐためには、手指の消毒、生活環境のなかで人が触れる物の消毒、室内環境の消毒などがとても重要です。
厚生労働省は、キッチンハイター、キッチンブリーチなど台所用次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いた新型コロナウイルスの消毒に、次亜塩素酸ナトリウム水溶液0.05%を推奨しておりますが、今回、北里大学で行われた新型コロナウイルス不活化検証試験では、次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、少なくとも0.15%以上の濃度が必要であることが明らかになりました。

新型コロナウイルス消毒薬検査

消毒剤の新型コロナウイルス不活化検証試験

北里大学大村智記念研究所 ウイルス感染制御学Ⅰ研究室、片山和彦教授らは、市場に流通している医薬部外品・雑貨および医療現場で使用されている消毒剤について、新型コロナウイルス不活化検証試験を行い、その効果を調査しました。
本研究では、新型コロナウイルスSARS-CoV-2 に対する不活性化効果について、エタノール、次亜塩素酸ナトリウム、インフルエンザなどの不活性化に有効とされている界面活性剤、そして実際に病院で用いられている消毒剤、家庭で多用されている市販ハンドソープ、手指衛生用品を調べました。さらに、ボトル製品として販売されている次亜塩素酸水や亜塩素酸水系雑貨品についても SARS-CoV-2その不活化効果を調べました。
注)SARS-CoV-2 とは聞き慣れない名前ですが、WHOは新型コロナウイルス感染症の正式名称をCOVID-19、その感染症の原因となるウイルス名をSARS-CoV-2と名付けています。

市販のアルコール消毒系消毒薬の不活性化効果

市販のアルコール系消毒剤を、新型コロナウイルスを 30,000 個含むウイルス液を混合して、1 分間、または、10 分間置き、消毒効果を調べました。その結果、アルコール濃度 50%以上の製品であれば、新型コロナウイルスを完全に消毒することが可能でした。またハンドソープ系、台所洗剤類、お掃除並びにふき取り系製品においても、新型コロナウイルスを完全に消毒することが可能でした。

市販の塩素酸水系消毒薬の新型コロナウイルス不活性化効果

二酸化塩素系・次亜塩素酸水系の製品について製品の劣化がないことを確認し、同様の試験を実施しましたが、新型コロナウイルスを完全に消毒することができないことがわかりました。

エタノールの新型コロナウイルス不活性化効果

新型コロナウイルスを 30,000 個含むウイルス液を、約 10 倍の容量の 70%、50%、40%、30%の濃度のエタノールと混合して、1 分間、または、10 分間置き、消毒効果を調べました。70%、50%濃度のエタノールでは、 1 分間処理することで完全消毒が可能でした。しかし、40%、30%では消毒が不十分で、生き残ったウイルスが増殖して細胞を死滅させてしまいました。

次亜塩素酸ナトリウムの新型コロナウイルス不活性化効果

次亜塩素酸ナトリウム水溶液でも、0.5(5,000ppm)、0.15(1,500ppm)、0.1(1,000ppm)、0.05(500ppm)、0.01(100ppm)の 5 段階の濃度の水溶液を作り、1 分間および 10 分間の消毒処理を行いました。1 分間接触では 0.15(1,500ppm)以上、10 分間接触では 0.1(1,000ppm)以上の濃度の水溶液で完全に消毒できることが分かりました。
しかし、厚生労働省が推奨する 0.05(500ppm)濃度の水溶液では、10 分間処理しても消毒が不十分で、生き残ったウイルスが細胞を死滅させてしまうことが分かりました。1 分間で完全にウイルスを消毒するためには、0.15%(1500ppm)の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用する必要があることが明らかになりました。

界面活性剤の新型コロナウイルス不活性化効果

家庭用のハンドソープや中性洗剤、洗濯石鹸の原料として使われる界面活性剤類について、新型コロナウイルス不活性化効果を調べました。
陰イオン系界面活性剤2種類、非イオン系界面活性剤2種類、両性イオン系界面活性剤1種類、陽イオン系界面活性剤1種類を、0.1%、0.05%ならびに 0.01%の濃度に調整し、1 分間および 10 分間、30,000 個の新型コロナウイルスと接させ、その消毒効果を調べました。
1 分間接触では、非イオン系アルキルグリコシド、は 0.1%、両性イオン系アルキルアミンオキシド、陽イオン系塩化ベンザルコニウムについては 0.05%および 0.1%で完全消毒が可能でした。10 分間接触では陰イオン系直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムは 0.1%、非イオン系アルキルグリコシド、両性イオン系アルキルアミンオキシドは 0.05%および 0.1%、陽イオン系塩化ベンザルコニウムについては 0.01%で完全消毒が可能でした。

消毒用アルコールのエタノールは、50%以上の濃度で 30,000 個の新型コロナウイルスをほぼ完全に消毒可能でした。
次亜塩素酸ナトリウムは、十分な消毒効果を得るためには 0,15%(1,500ppm )以上の濃度が必要でした。
一般市販医療器具消毒薬には、新型コロナウイルスSARS-CoV-2 の不活性化効果が不十分な製剤が幾つかありました。
身近な市販雑貨品については、洗剤系の製品は、ほとんどの製品で十分な消毒効果を確認できました。

抜粋
北里大学大村智記念研究所 ウイルス感染制御学Ⅰ研究室戸高玲子研究員、芳賀慧特任助教、澤田成史助教、片山和彦教授は、2020年4月17日に公表したプレスリリース「医薬部外品および雑貨の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)不活化効果について」 に続き、市場に流通している医薬部外品・雑貨および医療現場で使用されている消毒剤の、新型コロナウイルス不活化検証試験を行い、その効果を調査、発表しました。
本研究成果は、医療現場及び日常生活におけるSARS-CoV-2の感染を抑え、感染制御を確実に実行する指針となることが期待できます。 本研究は、専門雑誌『感染制御と予防衛生』(メディカルレビュー社)に2020年9月1日掲載されます。