三砂堂漢方鍼灸院

● 健康情報誌 ビワと健康2003年10月号「アトピーを根本から改善」

 ビワ温灸と漢方の併用治療で長年悩まされてきたアトピー性皮膚炎の苦しみから解放された女性(32)の改善例を紹介します。

この女性が初めてアトピー性皮膚炎と診断されたのは18歳のとき。症状としては首がカサカサする程度で、外用薬を塗るだけで収まったそうです。
21歳の春、今度は背中に痒みが出ました。前回に比べて症状が重く、ステロイド系の内服薬と軟膏で治療したそうですが一進一退を繰り返し、3、4年続けたところで薬の副作用によって肝機能障害を起こしてしまい、完治しないまま薬の使用を止めざるを得なくなったそうです。
28歳のころ、頭皮に痒みが出てきたそうです。血液検査ではアレルゲンが見当たらず、原因がはっきりしないまま顔にも湿疹が出始めたそうです。

季節の変わり目、特に春先になると症状が出やすいそうで当院を訪ねてこられたのも平成14年の2月26日のことでした。
症状はかなり重く、主訴としては頭皮(発毛部分)の痒みが強く、掻きむしって頭全体にフケが散らばっている状態でした。問診表に痒みの段階を記していただきましたが、6段階表記で4と5の中間4.5でした。ちなみに4は強度の痒み、5は耐え難い痒みです。
 顔にもカサカサ感や赤味、痒みがあり、こちらの段階は3(中等度)~4(強度)でした。
副訴としては口角炎、便秘等があり、便の水分吸収を抑える緩下剤(下剤)を服用しておられました。
この方はそれまで西洋医学的な治療のみうけてきたわけですが、私が東洋医学的見地から診ると貧血、筋肉(まぶた)の痙攣、イライラしやすいなど「肝血虚}(かんけっきょ)の症状が診られました。肝血虚というのは「肝」による血の調節が上手くいっていない状態を言います。
また、食欲不振、便秘、吐き気、浮腫、口角炎などの消化機能の低下、つまり「脾虚」の症状も診られました。
精神的なストレスや季節の変化など外からのストレスが加わると、肝は機能失調を起こしやすくなります。
肝は血と共に気の調節を行なう臓器です。肝が機能失調を起こすと気の停滞「気滞」を起こします。気滞は、まず精神症状の悪化を起こし、長引くと熱症状を起こしたり、のぼせ症状を起こすのです。
また、脾と胃との強調関係を崩すので、消化器症状のさらなる悪化を招くのです。
皮膚の表面は「脾」が担当していますが、皮下組織は「脾」との関わりが強く、アトピー性皮膚炎の病人には脾虚の体質の人が多いようです。

この女性の皮膚の炎症も肝と脾にあることが判りましたのでビワ温灸による治療を始めました。
また、漢方薬の服用も希望されていたので、併設の漢方部門で薬を購入されています。

1週間に2回のペースで治療を行ない、途中変動はありましたがまず副訴の症状である口角炎、イライラ、のぼせ、冷え等が6月4日の時点で完全に消失し、続いて主訴である頭皮、額の症状も6月25日には消失、安定しました。
なお、漢方やビワ温灸以外では石鹸やシャンプーを安全なものに代えてもらったり、食事に気をつけてもらうなどの基本的な改善にも努めて頂きました。原因をきちんと把握し、理に適った手法で治療、養生すれば病気は自然に改善されていきます。
幸か不幸かこの女性は肝機能障害を起こしてステロイド系の薬を止めてから時間が経過していましたから、薬のリバウンドで苦しむ問題は生じませんでした。

最後に、ビワ温灸で主に用いた経穴を列記しますので参考にしてください。
太衝、三陰交、足三里、豊隆、陰稜泉、心兪、膈兪、肝兪、腎兪、身柱、太谿、復溜、不容。
熱を抜く際には合谷、風池等も用いました。

◎三砂堂漢方鍼灸院 (ご紹介はこちらです。)
大阪府堺市丈六173-6
電話:0722-35-8282

(上記の文章、写真及び図表は、ビワの葉温熱療法普及会が発行している情報紙『ビワと健康』に掲載された記事を、転載しています。 )