● 健康雑誌 2007年8月号 無月経を根本から改善

 東洋医学では、無月経を「経閉」と呼び月経が3ヶ月以上中断しているものを指します。
今回は、ビワ温熱療法を中心にした治療で効果の得られた無月経の症例報告をしたいと思います。
 患者さんは、20歳代、未婚の女性です。3ヶ月前から低温期が続いたまま月経が来ないので、ご相談に見えました。
 10代の頃より月経が発来するのは5、6ヶ月に一度で、月経が起こるといつも強い生理痛に悩まされていました。
 婦人科で受診したところ、「40代後半の女性ホルモン量しかない」と言われ、ホルモン治療を受けましたが、体調が一層悪化し中止したとのことでした。

 東洋医学による治療も試されました。
 関西で著名な鍼灸師の治療を1年間に渡り受けましたが期待する治療効果は上がらず、 「貴女は子どもを産むのは難しいだろう」と言われ、途方に暮れていたそうです。
 この患者さんは、無月経以外にも多くの愁訴を抱えていました。
 幼少期からのアレルギー湿疹、浮腫、花粉症、肩こり、腰背部の痛み、冷え、腰痛、倦怠感・・・等々、カルテに書き込めないくらいでした。東洋医学的診察を行なったところ舌質は淡紅、舌苔は薄黄、脈は弦細穡(げんさいしょく)、皮膚は無華で色はやや黒、特に腰部は黒く抜けたようになっていました。

 腹診では「中カン」と「天枢」付近に硬結が認められ、背候診では、「カク兪穴」~「脾兪穴」付近までの筋緊張と腰陽関穴の圧痛が認められました。
 さて、東洋医学での月経に関係する器官としては、胞宮(子宮)、血海、腎、肝、脾などがあります。
 血海とは馴染みのない言葉ですが、生殖に関する血液・体液とその器を指します。
 腎は生殖を主るとされ、腎陽と腎陰のバランスで生殖がコントロールされています。
 肝は血を主るとされ、血海の主要部分を構成しています。
 脾は西洋医学と異なり、消化吸収の働きを指します。
 臂は食べ物から気血を作り出す源といわれ、やはり月経と密接な関りがあります。

 次に、東洋医学の理論に基づき無月経の発生原因を探っていきます。
 第一に、この患者さんは腎が弱く、先天の精の不足した腎精不足があります。
 加えて肝血の不足や脾虚も伴っており、これら肝腎脾の働きの低下が重なり気血の不足が生じているために血海を血で満たすことができず経閉(無月経)が起こっているのです。

 第二に、帰結が停滞し、その結果、衝脈と任脈による月経周期のリズムが作り出せなくなっています。この気滞血オがあるために、より一層月経が起こりにくくなっているのです。
 これらの無月経の発症原因を念頭において治療方針を決定します。
 まず治療の第一段階として腎を益し血を養うための「腎兪」「関元」「帰来」「三陰交」などの配穴、脾を扶養し、気を益するための「脾兪」「足三里」「カク兪」「気海」などの配穴を用いて治療します。

 この治療で気血をある程度補うことができれば、第二段階の治療として気帯血オを改善する治療に変えていきます。
「内関」「太衝」「期門」「肝兪」などを用いて気を流し、オ血を流すことで通経させれば良いのです。
さて、治療結果はと申しますと治療を開始してから43日目に月経が来ました。その後は30~40日の間隔で月経が起こりましたが、まだ経穴の色も希薄で量も少なく、器官も2~3日と短めでした。

 その後、2、3ヶ月月経が停止したのち再び月経が来ましたが、今度は少量の出血がだらだらと10~20日続くことがありました。
これは、腎の固摂機能や脾の統血機能が低下しているために血を留めることが出来なかったのです。
そこで、脾を補って統血させる治療に変更しました。

 「陰谷」「復溜」「三陰交」「脾兪」の配穴を中心に施術することで不正出血を止めることができました。
 さらに、仕上げとして気滞血オを除き、通経させる治療を行ないました。
 その結果、現在の月経周期は28~30日になり、月経期間もほぼ7日、経血の量も随分増えました。
 治療は開始当初からほぼ1週間に1回のペースで、ここまでの快復に要した期間は2年弱でした。
 無月経は、血の不足か停滞によって血海への血の供給が欠乏して発症します。

 この患者さんの場合は、ビワ温熱療法を中心に針と併用して治療を行ないましたが、気血を補うことや流すことを得意とするビワ温熱療法は、無月経をはじめ”血の道症”と呼ばれる女性病全般に広く応用できるものと考えます。

◎三砂堂漢方鍼灸院 (ご紹介はこちらです。)
大阪府堺市丈六173-6
電話:0722-35-8282

(上記の文章、写真及び図表は、ビワの葉温熱療法普及会が発行している情報紙『ビワと健康』に掲載された記事を、転載しています。 )