美容鍼灸のリフトアップ

近年、美容への関心の高まりとともに、「美容鍼灸」がテレビや雑誌で特集される機会も増えました。当院にも「顔のたるみを引き上げたい」「ほうれい線を薄くしたい」と、多くの方が期待を込めてご相談にお越しになります。

その一方で、「鍼で本当に顔がリフトアップするの?」「その場限りじゃないの?」といった疑問の声も少なくありません。三砂堂漢方では、東洋医学であっても、その効果を「なんとなく良くなった気がする」という感覚的なものではなく、「誰の目にも明らかな科学的根拠(エビデンス)」をもってお示しする責任があると考えています。

その想いから、2015年以来明治国際医療大学大学院と共同で、美容鍼灸がもたらすリフトアップ効果を検証する研究に取り組みました。

そしてこの度、その研究成果が『美容鍼灸施術が頬部皮膚のリフトアップに与える効果-ランダム化比較試験-』という原著論文として、医学雑誌「日本未病学会誌」へ掲載されました。原著論文とは、著者が独自に行い、新規性・有用性のある研究結果をまとめた論文のことで、研究者間の情報共有や知識の発展に貢献します。今回は、この臨床医学研究で一体何をどのように明らかにしたのか、そして、それが皆様のお悩みにどう応えるものなのか、少し詳しく、そして分かりやすくご報告させていただきます。

 .そもそも「たるみ」はなぜ起こる?そして、私たちの挑戦

まず、私たちの永遠の悩みともいえる「たるみ」は、なぜ起きてしまうのでしょうか。

主な原因は、「加齢による真皮網状層の変化」「重力の影響」「表情筋の機能低下」3つが複雑に絡み合って起こります。

①加齢による真皮網状層の変化:真皮網状層とは肌の土台の組織で、張力と弾力を発生させる機能を持っています。18歳頃完成し、その後お肌の曲がり角と呼ばれる25歳までその機能が維持されます。その後は老化や光老化により機能が衰えて、お肌がたるんできます。

②重力の影響: 地球にいる限り、私たちは常に重力によって皮膚を下に引っ張られています。加齢などによって、真皮網状層の張力や弾力が衰えると、重力に抗えなくなりたるみとして現れます。

③表情筋の機能低下: 顔には約30種類もの「表情筋」があります。通常の筋肉は間に関節を挟んで骨から骨へとつながっているのですが、表情筋は特殊な筋肉で、一端が骨(頭蓋骨)、もう一端が皮膚につながっています。表情の変化させるための筋肉なので、収縮力が弱く、拘縮していたり弛緩していたり、機能低下の起りやすいのです。この筋肉のアンバランスが、皮膚を支える力を弱め、たるみやシワの原因となるのです。

美容鍼灸は、こうした原因にアプローチできる施術として期待されていますが、その効果を客観的に「測る」ことは非常に困難でした。高精度なMRI3Dスキャナーを使っても、体動や緊張感などによる表情筋の収縮の影響を受けてしまうのです。また、非常に高価な装置でもあり、それでは一般の鍼灸院で手軽に効果を検証することはできません。

そこで私たちの研究では、まず「安価で、しかも誰もが納得できる精度を持つ客観的な評価方法」を確立することから挑戦しました。

 .信頼性の高い「研究デザイン」と独自の「たるみ測定法」

今回の研究が「科学的に信頼できる」と認められたのには、2つの大きなポイントがあります。

ポイント1:臨床医学研究で最も信頼性の高い「ランダム化比較試験」

この研究では、ご協力いただいた健康な女性を、コンピューターによるくじ引きで、「美容鍼灸の施術を受けるグループ」と「施術を受けずに安静にしているだけのグループ」にランダムに振り分けました。

なぜ、こんなことをするのでしょうか?

それは、「施術を受けたから良くなった」のか、「偶然良くなった」のかを、公平に比較するためです。このようにグループを公平に分けることで、施術そのものの純粋な効果を正確に検証することができます。これが「ランダム化比較試験」と呼ばれる、医学の世界で最も信頼されている研究方法なのです。

ポイント2:私たちが開発した「新規皮膚タルミ測定法」

リフトアップ効果の測定には、私たちが開発したユニークな方法を用いました。

まず、ベッドに仰向けに寝て、重力の影響が最も少ないリラックスした状態で、頬に安全なインクで真ん丸のスタンプを押します。

次に、体を起こして座った姿勢になります。すると、重力で頬の皮膚が下に引っ張られ、真ん丸だったスタンプが、たるみに応じて縦に伸びた「楕円形」に変わります。

この「丸」がどれくらい「楕円」に歪んだかを面積を元に精密に計測することで、「たるみの度合い」を数値化するのです。

この方法なら、高価な機材がなくても、誰でも正確にたるみを測定できます。私たちは、この客観的な指標を用いて、施術の前と後で「たるみの度合い」がどれだけ変化したかを比較しました。

.驚きの結果!データが証明した美容鍼灸のリフトアップ効果

さて、いよいよ気になる研究結果です。

結論から申し上げますと、美容鍼灸の施術を受けたグループは、受けなかったグループに比べて、頬が引き上がったことを示す『リフトアップ率』の数値が、統計的にも明らかに高いという結果が得られました。

「統計的に明らか(有意差あり)」というのは、「これは偶然や誤差では説明できない、間違いなく意味のある差ですよ」という科学的なお墨付きです。

さらに驚くべきことに、鍼灸グループのリフトアップ効果を示す数値(中央値)は、何もしなかったグループに比べて、なんと約3.3倍も高かったのです。

美容鍼灸のリフトアップ率

この結果は、私たちが日々臨床で感じていた「美容鍼はリフトアップに効果がある」という手応えを、客観的なデータとして明確に裏付ける、非常に画期的なものとなりました。

 .なぜ鍼とお灸でリフトアップするのか?論文が示すメカニズム

では、なぜ鍼とお灸の施術で、これほど明確なリフトアップ効果が現れたのでしょうか。論文では、そのメカニズムを以下のように推察しています。

① 鍼刺激による「生体の機能回復」

鍼を打つと、皮膚や筋肉に微細な刺激が加わります。すると体は刺激に反応し、血行を促進する様々な物質(専門的にはサブスタンスPや一酸化窒素など)を放出します。これにより、抹消血管が拡張し血液や栄養が隅々まで行き渡るようになり、皮膚や筋肉の機能が回復します。

② びわ温灸による「深部加温」効果

今回の研究では、鍼に加えて「びわ温灸」を併用しました。びわの葉エキスを含んだ温かい蒸気でじんわりと顔を温めることで、血行促進効果をさらに高めます。温熱効果と鍼の相乗効果で、筋肉の深部までアプローチできたと考えられます。

③ 筋肉・筋膜の「正常化」

血流が劇的に改善されると、これまで凝り固まっていた表情筋はしなやかにほぐれ、逆に衰えていた筋肉は活性化されます。これにより、顔の筋肉バランスが整い、皮膚を内側から力強く支える力が回復します。皮膚の土台である「筋膜」も引き締まり、これが即時的なリフトアップにつながるのです。

④ リンパの流れを改善し「むくみ」を解消

血行が良くなると、滞っていたリンパの流れもスムーズになります。顔に溜まった余分な水分や老廃物が排出されることで、むくみが取れ、フェイスラインが驚くほどスッキリします。

これらの作用が複合的に、そして瞬時に働くことで、施術直後から目に見えるリフトアップ効果が生まれるのです。

 .この研究の意義と、三砂堂漢方鍼灸院から皆様へのお約束

今回の研究は、単に「美容鍼が効く」と証明しただけではありません。高価な機器を使わずに効果を測定できる方法を示したことで、今後、より多くの鍼灸院で科学的根拠に基づいた施術が広まるきっかけになるかもしれません。私たちは、美容鍼灸業界全体の発展にも貢献できたことを誇りに思います。

そして何より、この研究成果は、三砂堂漢方にお越し下さる患者様と真摯に向き合う姿勢です。三砂堂漢方は、今後も東洋医学に科学的な探求を続け、常に技術を磨き、「安心・安全で、本当に効果が期待できる東洋医学」を皆様にご提供していきたいと思います。

「最近、鏡を見るのが憂鬱…」「年齢のせいだと諦めていた…」もし、あなたがたるみやシワでお悩みなら、三砂堂漢方にご相談下さい。健康回復と共に美容鍼灸で、あなたの本来の輝きを取り戻すお手伝いをいたします。

鏡を見るのが楽しくなる、自信を持って笑顔になれる毎日を、私たちと一緒に目指してみませんか?

ご相談だけでも大歓迎です。あなたからのご連絡を、心よりお待ちしております。

【論文情報】

論文名: 美容鍼灸施術が頬部皮膚のリフトアップに与える効果-ランダム化比較試験-

掲載誌: 日本未病学会誌

著者: 三砂 雅則(三砂堂漢方鍼灸院)、山崎 翼、佐藤 万代、伊藤 和憲(明治国際医療大学)

執筆者プロフィール