三砂堂漢方鍼灸院

健康情報誌 ビワと健康 2004年10月号 心身症痙性斜頸が改善

 心身症痙性斜頸(しんしんしょうけいせいしゃけい)が改善した女性(未婚、22)の例を紹介します。

痙性斜頸は、筋肉の異常緊張により、頭が横あるいは上下に向いてしまう病気です。
有名な料理店のウエイトレスとして勤務する彼女は、今年3月、仕事場で倒れ、1ヶ月間入院しました。
倒れる前は、風邪で微熱が続いており、仕事がきつかったということでした。

病名は、自律神経失調症。
実は16歳のときにも意識がなくなって倒れたことがあり、そのときも同じ病名が告げられたそうです。その際の原因はいじめで、1年ほどで治ったとのことでした。

当院に初めて来られたのは5月6日。退院してから1週間ほど経過していましたが、入院中に顔を正面に向けることができなくなって空を見あげたまま、顔が震え、首が揺れている状態でした。

肩こりもひどく、右腕の上腕がピクピクとひきつれたように動き、こめかみや後頭部に痛みがあり、体のだるさや無気力を訴えていました。
精神安定剤を服用していましたが、医師からは鍼灸の治療を勧められたといいます。
母親は看護士をしておられ、当院での東洋医学的治療を希望し、父親とともに相談に来られました。

 東洋医学では、四肢のマヒ、卒倒痙性斜頸など、意識に関係なく身体が異常な動きをすることを、風病と呼びます。中でも彼女のように、精神など身体のうちに原因があって発病するものを内風と分類しています。
彼女に東洋医学的な弁証名を付けるとすると「肝陽化風」になろうかと考えられます。
肝陽化風は、腎陰虚(腎に関連する物質の不足)があるところに、精神的、肉体的負荷が加わって起こります。肝の亢ぶりから生じた気や熱の上衝を抑えることが出来なくなり、そうすると内風が生じて、身体が異常な動きをするようになります。
特に、頭部は気や熱がどんどん上がって来るので、首を下に向けられなくなるのです。

漢方薬、鍼灸、ビワ温圧で補腎陰をしっかり行ない、気滞血オと内風を取り除く治療を行いました。
とくにビワ温圧は気滞血オを取り除く力が強く有効です。
5月7日から具体的な治療を始め、初めの2ヶ月間は週2回通ってもらい、7月に入ってからは間隔を開け7月31日に完了しました。
用いた経穴は、腎兪、太谿、腰陽関、三陰交、関元等で、硬結部分の天柱、肩井にもビワ温圧を施しました。
首は1回の温圧で治りました。しかし、外に出られない、人に会えないといったうつの症状等がありましたから、それらの改善には時間を要しました。

6月中旬からかなり良くなり安定剤も不要となって、7月12日には職場に復帰していただきました。
生活面では、交感神経と副交感神経とが逆転しており、お昼くらいまで体がだるい状態であったため朝、網膜に太陽の光を当てたり、食事も和食に替えるなどの養生をしてもらいました。

自律神経に絡む心身症状は、彼女のように若い世代に限らず更年期を迎えた年代でも非常に多く、治療に当たることが増えています。
治療の経過を運動系障害と精神症状に分けてグラフにしてみましたので参考にしてください。

◎三砂堂漢方鍼灸院 (ご紹介はこちらです。)
大阪府堺市丈六173-6
電話:0722-35-8282

(上記の文章、写真及び図表は、ビワの葉温熱療法普及会が発行している情報紙『ビワと健康』に掲載された記事を、転載しています。 )