11月に入って、新型コロナウイルスの感染者数が国内外ともに、再び増加傾向にあります。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して、鍼灸治療は有効なのでしょうか?

新型コロナウイルス感染症に関する鍼灸論⽂は

私が加入している全日本鍼灸学会では、新型コロナウイルス感染症COVID-19 に関する鍼灸論⽂を収集し解析しました。
鍼灸論⽂を収集方法は、以下の通りです。
1.検索するデータベース・・・PubMed, CENTRAL, Google Scholar, WHO COVID-19 Global Research
Database
2. 検索キーワード・・・COVID-19, acupuncture, moxibustion
3. 検索⽇・・・2020 年8 ⽉13 ⽇
検索の結果、35編の論⽂が検索されました。
国別では、中国の論⽂が30 編で、残りはドイツ2 編、⽶国1 編、⽇本1 編、ベルギー1 編でした。研究デザインの型による分類では、SR/MA のプロトコール6 編、症例報告4 編、観察研究3 編、SR 1 編、RCT プロトコール1編で、その他20 編は解説でした。

新型コロナウイルスに対する鍼灸論文の内容は

抽出された論⽂はほとんどが中国からの論⽂で、特に新型コロナウイルス感染症患者に鍼灸を⽤いて治療介⼊した報告はすべて中国でした。⽶国と⽇本の論⽂は、主に鍼灸治療院における感染防⽌の内容でした。
国別covid19関連鍼灸論文

中国の思惑

中国での論文のなかで、鍼治療と灸治療別では、観察研究3 編のうち2 編、症例報告でも1 編は灸治療に関するものでした。中国が灸による作⽤に注⽬していることがうかがえます。
中国では古来疫病の予防と治療に中医学が貢献してきたという歴史があります。また、中国のCOVID-19 ガイドラインをみても、中国国家中医薬管理局や中国国家衛⽣健康委員会が中医学的治療を推進していることをうかがわせます。中国の伝統医学を広く世界に普及させたいという国策もあるようです。

新型コロナウイルスに対する鍼灸介入の是非

しかし、論文は、観察研究の一つである記述的研究(症例報告)がほとんどで、介入研究や分析的研究ではありません。統計解析など科学的手法で鍼灸の有効性を⽰した論⽂はほとんど見られません。
全日本鍼灸学会では新型コロナウイルスに対する鍼灸師による介入は、我が国においては、予防的介入といえども市中感染が疑われる状況では適切ではないとの見解で、三砂堂漢方も同様に考えております。

抜粋
2020年初め、中国に端を発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、未だ終息の気配を見せず、日々感染者を出し、すべての国民が感染予防に努めることを強いられています。
全日本鍼灸学会では、会員に向けて、安全性委員会が作成した鍼灸治療院等における感染予防対策をウェブで公開していますが、今回、COVID-19と鍼灸に関する論文を収集しまとめてみました。
COVID-19に対する鍼灸師による介入は、我が国においては、例え未発症者に対する予防的介入といえども市中感染が疑われる状況では適切ではないと考えます。唯一自己による介入が、感染リスクがなく鍼灸を応用できる方法ですが、その有効性については基礎的なエビデンスが十分ではありません。一方で、中国においては臨床報告や臨床に関連した論文発表が行われていますので、まずはそれらを紹介したいと思います。参考にしていただければ幸いです。