● がんとサプリメント、一物全体食

 これまでお話してきましたように、がんをはじめ様々な慢性病の大きな原因の一つは、食生活の変化にあります。
現代人の食生活を見ますと、冷凍食品などの加工食品や精製された食品が圧倒的に増えていることです。代表的なのがお米で、玄米を白米に精米する過程で、胚芽や糠が取り除かれるために、昔では摂取できていた様々な栄養素が捨てられています。
魚も、日本人が古来から食べてきた食材ですが、最近は丸ごと食べることができる小魚が、食卓にのぼる機会が減りました。その代わりに、大型の魚の切り身であったり、わざわざ加工している場合が多いのです。
でも、調理が簡便さ、食べやすさ、見た目の良さばかりを求め続けることによって、栄養が偏り、心と身体の両面に悪い影響が出ています。

最近、健康志向からサプリメントがブームになっておりますが、ほとんどが化学合成された栄養素か、または天然物由来であっても、精製されたものばかりです。医薬品であれば単一に精製分離された有効成分を摂取することに意味はあるでしょう。しかし、食品は生きて上で必要な様々な栄養素が総合的に必要ですし、まだ、解明できていない未知の栄養素も沢山あるはずです。果たして、市販されているこのようなサプリメントで、食事で不足している栄養素をはたして補うことが出来るものなのでしょうか。
一物全体食クロレラ
今、食生活改善で見直されているのが、明治時代の医者、石塚左舷です。石塚左舷は、「一物全体食」=「ホールフーズ」の考えを「食養論」で提唱しました。命あるものをそのまま丸ごといただくことによって生命のエネルギーが活性化し、心身の不調も改善できるという思想です。
私は20年以上東洋医学の仕事に携わる中で、経験的に多くの患者さんから最も高い評価を得ている機能性食品がクロレラで、現代版の一物全体食です。

クロレラは20億年前に誕生した淡水に生息する葉緑素を持った藻の一種です。太陽エネルギーと大気中の二酸化炭素を取り込んで、非常に活発に増殖し、ビタミン・ミネラル・食物繊維を沢山含んでいます。地球上の全ての生物は太陽エネルギーで生きていますが、クロレラは動物の食物連鎖の原点の一つであり、一方人間はその頂点に立ちますから、クロレラは私たちが生きていくために必要な栄養素のほとんどを持っています。そのため、クロレラの摂取は現代の一物全体食になり得るのです。 しかしながら、クロレラは非常に厚い細胞膜を持っているため、人間の身体では、なかなか消化することが出来ません。クロレラはこの厚い細胞膜のお陰で、細菌やウイルスなど外敵の侵入から身を守り、20億年もの間、生き続けて来たのです。

クロレラは、池や水槽の中の水が緑色になることがありますが、これがクロレラで特殊な生き物ではなく、どこにでもいる生き物です。しかし、私が注目しているクロレラは、少し違っていて、筑後地方の水路で発見された細胞膜の薄い特殊なクロレラです。生物学上での分類では「クロレラ科パラクロレラ属バイエリンク種チクゴ株」と呼ばれ、形は似ているものの、一般に見られるクロレラとは遺伝子的に随分異なっています。このチクゴ株の細胞膜は10分の1と非常に薄いため、人間の体内では82%が消化吸収されます。

また、細胞膜が薄い分、外敵の侵入を受けやすいのですが、チクゴ株は多糖体という生体防御に係わる物質を分泌して、自分自身の身を守っています。実はこの多糖体が人間の身体にも良くて、免疫・自律神経系・ホルモン系・代謝系からなる生体防御の力を高める働きがあります。

科学で解明されている身体の働きは、ほんの一部です。食生活の中での栄養素を考えたとき、私たちは既知の栄養素だけで栄養のバランスを考えても良いのでしょうか。例えば、緑黄色野菜のベータカロチンという栄養成分ががんに良いいわれても、精製されたベータカロチンを大量に摂取すると逆に発がん物質になることも確認されています。大豆に含まれるイソフラボンも女性のホルモン失調に良いと言われても、やはり副作用があります。しかし、大豆を幾ら食べても、副作用は出ません。サプリメント=健康食品の摂取を考えるとき、精製された成分には注意が必要です。マスメディアなどの情報源に頼るのみでなく、長年の健康相談で経験豊富な専門家に相談されることをお勧めします。

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