政府は5月25日、新型コロナウイルス(COVID-19)に関する緊急事態宣言について、継続中の東京・神奈川・埼玉・千葉・北海道を対象から外して、約二ヵ月に及んだ自粛期間はようやく解除となりました。
 連日の報道では、諸外国からの悲惨な状況が伝わる一方で、PCR検査の少なさやロックダウンを行わない日本の姿勢に、海外からも多くの批判が浴びせられて来ました。しかし、理由はともあれ、結果的に欧米と比べて日本が深刻な感染状況を回避できたのは幸いなことですね。
 緊急事態宣言が解除された今後の感染動向については、感染者数の推移に注意を払う必要がありますが、新型コロナウイルスと共存していく新しい時代へ一歩を踏み出したことには間違いはありません。

発熱は新型コロナウイルスだけの症状ではない

発熱 私たちが発熱したとしたら、全員が新型コロナウイルス感染症を発症しているのでしょうか?その発熱の原因が、全て新型ウイルスであるとは限りません。むしろ新型コロナウイルス感染ではないことの方が多いでしょう。発熱は、様々な病原微生物の感染や炎症などの免疫反応の一環として起こります。しかし、新型コロナウイルス感染症を警戒する現状では、治療を受けようとしても、新型コロナ受診相談センター等に相談することを促されるケースが多いのではないでしょうか。

川越救急クリニックの副院長 木川英医師は、日経メディカルに「『主訴:発熱』で門前払いの患者を診て思うこと」と題して、以下のような投稿をされております。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/kigawa/202005/565691.html
来院時に門前払いせずに、せめて上気道症状の有無を確認して、自院で診療可能なのか、診ることができないのであればしかるべき施設に紹介するといった対応がなされないと困ってしまうのは患者さんです。
症状的に新型コロナウイルスではない疾患が疑われるのに、発熱を理由に受診できなかったという、2症例を紹介されております。

新型コロナウイルスではない疾患(症例1)

Aさん、40歳代女性
主訴:発熱
既往歴の無い女性。内服薬もなし。朝から発熱あり、悪寒もあり。経過を診ていたが、改善しないので近くの中規模X病院を受診。しかし、受付の段階で「38℃の発熱がある方は受診できません」と門前払いされてしまって路頭に迷い、救クリを受診。
発熱以外の症状は、寒気と節々の痛み、咽喉の痛み、咳や鼻水は特になし。軽い腰痛と嘔気、残尿感や排尿時痛はあるような気がする。食欲は昼までは普通。
膀胱刺激症状もあるし、明らかに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ではなさそうだが……。
咽頭発赤なし、肋骨脊柱角叩打痛が若干陽性。
新型コロナウイルス感染症よりも尿路感染症の可能性が高そうなので尿検査を実施し、潜血(1+)、白血球(3+)。 
尿路感染症と診断
患者A 新型コロナウイルスは関係ないですよね? 私も違うと思ったんですよ。ずっと家に居ましたし。

新型コロナウイルスではない疾患(症例2)

Bさん、50歳代男性
主訴:発熱
高血圧症でYクリニック通院中。3日前から調子が悪く、2日前に39℃の発熱あり。膝も痛くなってきたため、朝にYクリニックを受診。上気道症状がない旨を伝えるも、発熱があるため受診できず。救クリを受診するように言われて来院した。
発熱以外の症状は、左膝痛、咽喉の痛み、咳や鼻水はなし。腹痛、嘔気や下痢はなし。膝の打撲はなく、一週間くらい前に虫に刺されたようで痒みがあり、その後痛みが出る。
Bさんの膝部は、皮膚や皮下組織の炎症蜂窩織炎と診断。
患者B ですよねー。膝が痛いって言ったのに、熱があるから新型コロナウイルスかも知れないと言われて……。

 症状的にCOVID-19ではない疾患が疑われるのに、発熱を理由に受診できなかったという、個人的には「異常」に思ってしまう2症例を紹介させていただきました。もちろん、院内感染は避けなければならないので、発熱患者を断る理屈はよく理解できます。しかし、発熱患者だからといって全員が新型コロナウイルス感染者ではないことは明らかです。
 発熱の鑑別疾患はCOVID-19だけではないはずですし、今やむしろ他の疾患の可能性の方が高いと思われます。施設によってはCOVID-19と判明したら受け入れられないとか、十分な感染対策を取れるスタッフが確保できないといった懸念もあるとは思います。それでも、来院時に門前払いせずに、せめて上気道症状の有無を確認して、自院で診療可能なのか、診ることができないのであればしかるべき施設に紹介するといった対応がなされないと、困ってしまうのは患者さんです。
 このような時期だからこそ、誰よりも患者さんのためになる医療を地域で協力して提供していきたいですね。では、また次回。